北海道や京都と並び、日本を代表する観光地として名を馳せている沖縄、2015年の総観光客数は776万人にも及ぶなど、なんと3年連続で過去最高の観光客数を記録しています。基地に依存した経済からの脱却を目指し、その文化、気候、歴史、そして食事の魅力を伝えるべく観光産業の振興を測る沖縄ですが、様々な施策のおかげでその数は順調に推移しているといえます。
そうは言っても、まだまだ国内の観光客が多くの割合を占めているのが事実。2015年度は訪日ブームともいえ、1,974万人もの外国人観光客が日本に訪れている中、沖縄への外国客は150万人の実績となりました。
その割合で言えば、日本全体のたった7%、沖縄全体の25%ほどとなっており、まだまだ沖縄における外国観光客数は増加の余地があると言えそうです。
なぜならその150万人のうちそのほとんど(約85%)が台湾、韓国、中国、香港という東アジアの観光客が中心となっているからです。円安の継続や、航空線の増加やクルーズ船の寄港などの影響もあり大幅な増加をみせ、東アジアの人々は沖縄の経済に貢献してくれていますが、近隣からの観光となるため滞在数日数が少なく、また欧米人よりも現地よりも消費単価が低い傾向があります。

またその多くは「沖縄」というブランドに魅せられて来るのではなく、「日本の商品を買いに行くのに一番近い場所」という感覚で訪れている方が多く、ドラッグストアやディスカウントストアには多くの人が集まるのですが沖縄の歴史や文化に触れる機会が少なく沖縄が持つ本来の価値をしっかり伝えきれていないのも隠れた事実です。
そのように東アジアの人々だけではなく、欧米人にもしっかりと沖縄の本質的な魅力を伝えていくべき課題がある中で、沖縄県は2015年11月から非常に秀逸なキャンペーンを展開しています。まだ実施から2ヶ月ほどしか経っていない中で大きな反響を得ている、「OKINAWA: The Secret is Out」というキャンペーンがそれです。その詳細は以下にご紹介します。
世界中に沖縄の本質を伝える動画ドキュメンタリー「OKINAWA: The Secret is Out」 とは?
沖縄県は2021年までに200万人以上の外国人観光客を目指しており、世界に沖縄の魅力を発信する取り組みとして「Be.Okinawa」ブランドを展開しています。この「Be.Okinawa」におけるキャンペーンとしてスタートした「OKINAWA: The Secret is Out」はフランス、ドイツ、アメリカ、シンガポール、タイ、中国の6ヵ国から、「大切な人に秘密を持つ人」6組を招待し、それぞれのエピソードを描くドキュメンタリー動画コンテンツとなっており、登場する旅行者はもちろん、映像の制作も全て外国人スタッフによって行なわれるという向けた徹底ぶりです。
大切な人に対して秘密を持っている6人の外国人がこのドキュメンタリー動画の主人公ですが、そんな人々が沖縄で過ごした後、大切な人に自分の秘密を告白するというストーリー構成となっています。
”沖縄には自然と自分らしくなれる、沖縄マジックがある”をコンセプトとしており、そのリラックスできる沖縄で過ごすことで各国の人々が素直になれる様子をリアルに描いています。
エキサイティングな体験やここでしかできない思い出つくりなどが旅行や観光の醍醐味ですが、それらに加え沖縄にしかできない体験として、美しい自然やおおらかな島人との出会いによる「心の癒やし」が挙げられます。それら沖縄独特の、訪れるすべての人を受け入れる空気感の中で大切な人に想いを告げるドラマを通して、沖縄の本質的な価値を伝えることがこのキャンペーンの意図と言えるでしょう。
大成功したANAの「マッタリーナ・ホッコリーナ」キャンペーンやアンケートを見ても、沖縄の魅力としてその「癒やし」を感じている人が多いのは明らかであり、その価値を伝える手段としてこの「OKINAWA: The Secret is Out」 は面白い切り口だと感じます。
リアルさを追求するため、プライベート旅行として過ごしてもらう中での撮影はもちろん、告白シーンは隠しカメラを設置しスタッフもいない状態で撮影を行ったといいます。「台本なしのドキュメンタリー形式」で世界各国の人々の素直な想いを引き出すことができたとても面白い事例と言えるでしょう。それでは、以下にそれぞれの動画を簡単にご紹介したいと思います。
1.親子の絆、家族愛を深める旅(アメリカ)
秘密を胸に沖縄へやってきたアメリカ人女性ジュリーと、父親のロニーが主人公。65歳を過ぎるまでアメリカ南部から出たことがなく、パスポートすら持っていなかったという父親に対し、自分の意思で人生を変えることを決断したジュリー。保守的な父親に対して、一大決心を伝えるためにジュリーは石垣島や竹富島という自然溢れる沖縄の離島にロニーを招待しました。
美しい大自然の中で、久しぶりに親子の時間を過ごします。ラストシーンでジュリーが想いを告げた瞬間、戸惑いを隠せないロニーのリアクションは、まさにドキュメンタリー。果たして、娘の想いは父親に届くのでしょうか…
2.夫婦の絆、夫婦愛を深める旅(フランス)
パリ在住のエリックは、40歳という年齢でトレーダーの職を失い、現在失業中の身。そんな中ではありますが、いつも彼を支え続けた妻イザベルと「初めてのハネムーン」で久米島にやってきました。妻への感謝を伝えるためにエリックが企画した、離島ならではのロマンチックなサプライズはもちろん、島民の温かさに触れることで元気を取り戻していくエリックの様子にもなんだか共感してしまいます。2人の愛を感じることができるサプライズは一見の価値ありです。
3.これから人生を共にする2人の絆、愛を確かめ合う旅(ドイツ)
ドイツ・ベルリン出身のマーラ、彼との出会いに関して「恥ずかしいとことをしてしまった」とその秘密を打ち明けられずにいる彼女ですが、本島北部に位置するやんばるで彼とリラックスした時間を過ごします。そんな中、出産を控えたマーラは二人の出会いにまつわる、少し恥ずかしい“秘密”を打ち明けます。マーラの可愛らしい秘密を優しい笑顔で包み込む彼。沖縄で、3人の小さな家族が生まれた瞬間でした。
4.自分の本当にやりたいことを、家族に伝える旅(シンガポール)
シンガポール出身のマーケッターであるこの物語の主人公プリシラ、将来を保証されたはずの彼女は人生を左右する、ある大きな決断をします。
大切な両親に自分の決断を伝える場所は、那覇。伝統的な沖縄料理を堪能し、牧志公設市場でのショッピングを楽しんだ後、彼女の本当にやりたいことを伝えるため、とっても素敵な方法で秘密を打ち明けます。思わず動画をとってしまう両親の反応がとてもリアルで面白いですよ。
5.愛する人のため、自分自身の全てを伝えて絆を深める旅(タイ)
ファッションとアートが大好きなポップとファーンは、バンコク在住のカップル。彼らは婚前旅行先に、最新トレンドと伝統的な沖縄文化が共存する、那覇を選びました。2年前に心臓発作の手術をしているポップは、ファーンの心配をよそに、ランニングの習慣をやめません。なぜそこまでランニングをすることにこだわるのか、そこにはある大きな“秘密”があったのです・・・。ポップとファーン、そして1匹の猫にまつわる、心温まるエピソードです。
6.子育ての困難を乗り越えた夫婦が絆を深める旅(中国)
上海出身のルーシーは、3年前、産後うつで苦しんでいました。人生で一番幸せな時期のはずなのに…と自分を責め続ける彼女は、ある日、ふと夫の携帯を手に取り、秘密のメッセージを見つけてしまいます。
そのメッセージで自分を変えることができたルーシーですが、なかなかその隠し読んでしまったその秘密を伝えることができません。
首里城やかりゆしビーチ、美ら海水族館を観光し、我が子と夫の楽しそうな姿を見て、改めて家族の幸せを実感したルーシーは、ついに隠し続けてきた思いを夫に伝えます。ルーシーがあの日見てしまった、夫のメッセージとは…?
動画によるリアルなストーリーと高いクオリティで世界を魅了する「Be.Okinawa」ブランド
以上、6つの心温まる動画をご紹介いたしました。世界各国の人々によるドキュメンタリー動画、いかがでしたでしょうか。首里城、国際通り、美ら海水族館、古宇利島など本島の主要な観光地はもちろん、石垣島、久米島、竹富島など離島の大自然も感じられる映像に仕上っており、沖縄の魅力を各々のストーリーと交えて改めて知ることができます。国ごとのコミュニケーションの違いが面白くも、大切な人を想う気持ちは共通していると感じる心温まる内容ですよね。
キャンペーンの開始から3ヶ月ほどで150万再生以上にも及ぶこのキャンペーン、数字だけをみてもそのインパクトがおわかり頂けるかと思いますが、なんとこちら「Be.Okinawa」のキャンペーン第二弾となっており、2014年には第一弾となる「OKINAWA: A Journey of Discovery」キャンペーンを実施しています。
第一弾の動画コンテンツも大きな反響を呼び、動画総再生数190万回以上、動画紹介記事のインプレッション2250万を記録するだけでなく、施策展開後の沖縄への海外旅客数が前年比164%を達成するなど大きな成果を残しています。
沖縄の人々との出会いや文化体験を通じて、それぞれに課せられた「チャレンジ」挑む様子が描かれたリアルでかつとっておしゃれな動画となっており、動画制作もロンドンに拠点を置くプロダクションを起用しているとか!ちなみに今回ご紹介した第二弾の「The Secret is Out」はロサンゼルスのプロダクションです。
他にも「HAPPY SURPRISE OKINAWA」という台湾、中国、韓国の人に女性に向けたドラマ仕立ての動画コンテンツや、「MEET THE LOCALS」という世界各国と沖縄の地元の人達のリアルな反応を比べた動画コンテンツ、「UNCOVER YOUR OKINAWA」という沖縄の写真投稿サイトなど、たくさんのユニークなPRコンテンツを用意し世界へ沖縄ブランドを発信しているのがこの「Be.Okinawa」です。
動画やソーシャルメディアを活用したそれら施策は、他の地方と比べても大きく最先端を行っていると言えるでしょう。ターゲットとなる外国人との双方のコミュニケーションを重要視している「Be.Okinawa」戦略によって、200万人以上の外国人観光客は、2021年を待たずに達成されることでしょう。これからの沖縄県の取り組みに引き続き注目していきたいと思います。