【保存版】沖縄をはじめとした11都道府県の地方自治体による観光PRプロモーション成功事例

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ブランド総合研究所と呼ばれる調査機関が発表する「地域ブランド調査」というのはご存知でしょうか?これは47都道府県を対象に認知度や魅力度、イメージなど全74項目からなるアンケート調査で、全国の3万人以上もの人々を対象に毎年実施されています。このリサーチによる2014年の県別ランキングは1位から順に北海道、京都、沖縄と並び観光地として知られる場所が上位を占める結果となっています。(東京都、神奈川県、奈良県、福岡県などのがその後に並びます。)

動かしようのない自然や文化などの観光資源、そして気候や食文化、そして昔からのイメージなどもあり、それらのランキングを大きく変えることは難しいかもしれませんが、インターネットやスマートフォンが普及した今、各都道府県、及び地方自治体の観光プロモーションの流れが激化してきています。もはやどれだけあるかわからない各地のゆるキャラをみてもその勢いが見て取れるでしょう。

そして、そのPRやプロモーション方法ですが主に各自治体はその場所の魅力をより深く伝えることができる”動画”に注力しています。文章や画像だけで伝えるよりもより直感的にその土地を感じられるのはもちろん、テレビに頼ることなくYouTubeやソーシャルメディアを通じて多くの人に見てもらうことができるからです。(予算に余裕のない自治体にとってはとても重要なことです)

そこで今回は以下に際立ったコンセプトやPR動画でプロモーションを行なう11県とそのPR内容をご紹介したいと思います。どれもその土地の魅力を引き出すメッセージ性ある訴求となっており、沖縄のこれからの観光プロモーションを考える上でも役立つ点を多く見つけることができるでしょう。

大分県:世界中を沸かせたい気持ちが伝わる温泉シンクロムービー

大分県:シンフロ
「日本一のおんせん県おおいた 味力も満載」というタイトルの元、2015年10月から展開されている大分県の観光プロモーションがこちらです。なんとシンクロ×温泉=シンフロという切り口で、なんと大分県にあるバラエティ豊かたな人気の温泉でプロのシンクロナイズドスイミングチームがシンクロを行なうというPR動画を展開しています。「日本一の温泉で、世界のみんなを沸かせたい」というキャッチコピーも秀逸で思わず見入ってしまう事間違い無しのムービーとなっています。

このインパクトある動画が受け、最終的なWebでの露出量は300件以上、動画埋め込み記事が120件以上、Yahooトップの「話題なう」にも入ったと大変な露出に繋がったといいます。さらにネットで話題になることで、なんとテレビでも12番組で取り上げられたといいます。キャンペーンサイトも素晴らしいものになっているのでぜひご覧になってみてください。詳細はこちら 



高知県:「人と人のつながり」を訴求する移住促進キャンペーン

高知県:大家族

こちら広末涼子さんが顔となっている高知県のプロモーションは他県の観光促進PRとは異なり、「高知県はひとつの大家族」というコンセプトで、高知に住む人を増やすためのプロモーションを2013年から行っています。サイトにも「高知家の家族はみんなぁがスターやき」と様々な魅力がある中で、高知に住む「人」にフォーカスをあてたものとなっており、高知に住む魅力的な人々が紹介されていてとても親近感を感じる内容となっています。

WEB界隈で話題のイケダハヤトさんも積極的に移住を促しており、高知県には目が離せません。詳細はこちら




香川県:うどんだけのイメージからの脱却?面白いコンテンツで魅力を発信

香川県:愛にきてうどん県

「香川県はうどん県に改名します」と衝撃的なプロモーションで世間を賑わせた香川県、インパクトある訴求でこれまで全国知名度調査で最下位を脱却できたのが2012年、毎年要潤を起用して行なうこの観光プロモーションですが、2015年のテーマは『うどん県。それだけじゃない香川県』となっており、その名の通り今度は”うどん”だけのイメージからの脱却を狙っているのが伺えます。

最新の動画も「サウンドオブミュージック」を意識したのか、「ウドンオブミュージック」となっておりミュージカル形式のストーリー性のあるムービーでうどん県こと香川県をうまく訴求している内容になっています。詳細はこちら



広島県:「おしい」「泣ける」から「カンパイ」へ、広島県のストーリーある観光戦略

広島県:カンパイ!広島県

2013年に有吉弘行が観光大使となって、スタートした広島県の大型観光キャンペーン。当初は広島県がもつ観光資源を、自虐的に〈おしい〉と一歩引くことで逆に注目を集める狙いで「おしい!広島県」というキャッチコピーでスタートしたキャンペーン。翌年のPerfumeが表紙を飾ったガイドブック「泣ける!広島県」でも数日間で初回5万部が品切れと大きな反響を呼び、2015年は「カンパイ!広島県」という切り口でまたWEBサイトと共にバージョンアップしたガイドブック配布を展開しています。

ガイドブック

「見んさい!食べんさい!飲みんさい!」をテーマにした奥田民生さんが表紙の2015年版も大好評だったとのことで、2016年のコンセプトや表紙も楽しみです。詳細はこちら



岡山県:ダサい?パクリ?あらゆる点で突っ込みどころが満載の岡山市PR

岡山県:伝説の岡山市

「この度、岡山市は『桃太郎市』に改名いたします」という「うどん県」のPR手法のパクり、そして「おしい!桃太郎市」のキャッチコピーも広島県のパクりと「あれ?」と思わせる展開だけならず、上記ご覧の通り昔よく見たであろう90年代後半を彷彿とさせるWEBサイトのデザイン!そのダサさとパクり疑惑で注目を集めた岡山市のキャンペーンです。

岡山市

これには続きがあってなんと「鬼が髙谷市長を操って偽の発表をしてしまった」というストーリー展開で、改めて本物のPRスペシャルサイトを公開するという流れの企画となっております。「あなたの知らない伝説が、岡山市にはある」というキャッチコピーで2013年からスタートしている岡山市のPRサイト、こちらも様々な動画で魅力を伝えています。詳細はこちら



新潟県:地元に住む美少女が紹介をする地域密着型美少女パンフレット

新潟県:美女旅

広島県がパフュームや奥田民生を活かしたパンフレットならば、この新潟県南魚沼市のパンフレットは地元に住み、地元を愛する美少女が町の魅力を紹介する美少女観光パンフレットです。「美女旅」と名付けられたこの南魚沼市役所による観光プロモーションは2012年にスタートし、今でも岩手県や上越新幹線のプロモーションとして広がり、盛り上がりを続けています。

”地元美女が地元名所を紹介する”という市役所らしからぬコンセプト、オンラインでも公開される一方、地元各地で配布され大きな反響を呼びすぐに在庫がなくなってしまったとか。その場所のことを一番知っている地元の子、ましてや綺麗な美少女から街案内をされてテンションが上がらない人はいませんよね。

美女旅

他にも地元の和菓子や洋菓子店とコラボレーションした「美女旅×Sweets」といった番外企画などもあり、美少女という切り口のコンテンツの強さを改めて感じることができる企画です。詳細はこちら



石川県:金沢、加賀温泉郷が誇る100人ものレディーカガとは?

加賀県:レディー・カガ

こちらもまたダジャレが聞いた面白い切り口の観光PR戦略、言わずもがなああの世界的アーティスト「レディー・ガガ」を意識して名づけられたネーミングの加賀温泉郷が実施するプロモーションです。

そのレディー・カガは個人名ではなく、温泉旅館はもちろん飲食店や観光施設のスタッフなど、加賀温泉郷で働く100人の女性によるグループ名で加賀温泉郷の観光大使として様々な活動を行っています。あのくまもんをおもてなししたり、海を超えニューヨークまで加賀のおもてなしの精神を伝えるために出張をしたりと大忙しです。

公式サイトの動画を通してその活躍を見ることができますが、なんと楽曲の仕様について本家レディー・ガガからクレームがきたとかこないとか。そのハプニングも含め話題性バツグンの加賀のレディー・カガ、北陸新幹線も開通している今これからどのような取り組みを行っていくのか引き続き目が離せません。詳細はこちら



徳島県:対東京の構図で「宣戦布告」することで強いメッセージを発信

VS東京

「徳島が日本を変える」というメッセージと共に「vs 東京」というインパクトある共通コンセプトで、2014年からプロモーションを行っているのが徳島県です。他県のPRをのように「東京と比べた魅力」を伝えるのではなく、あえて仮想敵として圧倒的な存在である「東京」を据え置くことで、地方の価値を都市生活者にプレゼンテーションすることが狙いといいます。

”東京をはじめとした大都市には無い価値を、自ら見つけて、産み出して、アピールしていく、というのが 共通コンセプトが目指すゴールです。”

強敵に一致団結して勝ち望んでいく、という誰しもが共感するストーリー展開を観光プロモーションとして取り入れた切り口は見事といえるでしょう。動画も少し長いですが徳島の魅力が伝わる素晴らしいものに仕上がっています。PRサイトでは10の宣言をかかげ自らのアイデンティティを力強く打ち出す様も一見の価値ありです。詳細はこちら



宮崎県:拡散を生み出すどんでん返し動画による移住促進PRの成功事例

2015年最も話題になった地方自治体によるプロモーションと言えるのがこちら宮崎県小林市の「てなんど小林プロジェクト」の動画。宮崎県小林市に長く住むフランス人が、小林市の森、水、星、食、人という魅力を外国人ならではの視点紹介していくもの…なのですが、最後の最後でびっくり仰天、なんとフランス語だと思っていた言葉は地元の方言「西諸弁」だったというオチです。その”やられた感”に話題が話題を呼び、動画は200万再生近くまで及ぶまでに。

この小林市も他地方に漏れず深刻な高齢化及び過疎化で人口減少に歯止めがかからない中、打ってでたこの「てなんど小林プロジェクト」。「てなんど」とは、地元の方言で「一緒に」という意味の「てなむ」と、地域資源のブランド化をしたいという思いの「ブランド」をつなぎ合わせた造語。この言葉と共にこの小さな街が今後どのようにプロモーションを行っていくか今年も目が離せません。詳細はこちら



鹿児島県:自然の魅力をストレートに伝える圧倒的な映像美

鹿児島:本物。の旅かごしま

ユニークなコンセプトやアイデアを活かした他県の観光PRと違い、鹿児島は本質を見極め、その場所にある自然や文化を「動画」で伝える活動を行っています。ポイントがその動画のクオリティの高さ、全自治体初となる4K映像を採用しており国内だけならず海外でも大きな反響を呼んでいます。

100万回を超える動画再生回数の打ち合けがタイ25万、シンガポール5万5千、香港4万3千など、言語を必要としないその映像美で世界中の人までも魅了したのが2014年の「KAGOSHIMA Energetic Japan」というキャンペーン。

そして2015年は「BIRD’S EYE VIEW OF KAGOSHIMA」と銘打ち、鹿児島県の離島をドローンで空撮。青い海、空、そしてサンゴ礁など、息を飲むほど美しい南の島々を感じることができます。話題のドローンの正当な活用事例とも言えるこれらの高画質動画、撮影ポイントの地図や解説テキストもあるのでその場所の理解を深めることもできます。観光の本質やターゲットを見極めつつ、テクノロジーを駆使した貴重な事例と言えるでしょう。コンセプトは「本物。の旅かごしま」、まさにその土地がもつ本物を感じることができます。詳細はこちら



沖縄県:ストーリー性ある動画を通して外国人を対象の沖縄の本質を訴求

沖縄県:secret is out

最後にご紹介するのが我らが沖縄県、近年沖縄が力を入れている観光プロモーションは主に欧米人をターゲットにしたもの。国内や台湾、韓国など東アジアの地域においてはリゾート地として一定の好感度を得ている沖縄ですが、欧米の人々への認知はまだまだ低いのが現状です。より中長期的に観光収益を上げていくには、長期滞在をし多くのお金を落としてくれる欧米人の集客が不可欠です。そういった課題をもとに展開されているのが「Be.Okinawa」というグローバルブランディングキャンペーンです。

その主軸となったのがやはり動画によるメッセージ、2014年は「OKINAWA: A Journey of Discovery」というタイトルで欧米豪露出身の7人の外国人が沖縄の人々との出会いや文化体験を通じて、それぞれに課せられた「チャレンジ」に挑んでいく様を描いたコンテンツ。なんとこの動画の再生数190万回以上におよび一定の成果を果たしたといいます。

そして2015年11月には第二弾として「OKINAWA: The Secret is Out」というまるで映画のようなコンテンツと共にメディアキャンペーンが展開されました。美しい自然とおおらかな島民に囲まれ、ゆったりとした時間が流れる沖縄だからこそ自分と向き合え素直になれる、という切り口。それぞれ秘密を持っているフランス、アメリカ、ドイツなどの旅人たちが大切な人と沖縄を訪れ、その秘密を打ち明けることでお互いの絆を強いものにしていくという映画さながらな演出とドキュメンタリーが沖縄の魅力をさらに惹き立てています。(それぞれの国の旅行者ごとに6つの動画に分かれており、上記はアメリカからの観光客のストーリーです。)

コンセプトは「自然の本来の自分の戻れる魔法の島、沖縄」、物見遊山的な観光だけではない、自分らしくなれる観光地として沖縄の強みを世界に発信していくのに最良のコンテンツと言えるでしょう。



まとめ:観光プロモーションを成功させるための3つのポイント

以上、大変長くなってしまいましたが、大分、高知、香川、広島、岡山、新潟、石川、徳島、宮崎、鹿児島、沖縄という11県の観光プロモーションをご紹介しました。どれも先鋭的、かつ秀逸なPRを行っていますが、その中でも西日本が9県を占める結果となったのは面白いですね。

こうしてみてみると成功する観光プロモーションには3つの共通点がみてとれます。ずばり「コンセプト」「動画」「リアル」こそ地域の認知を広げる、そして集客を行なうために必要不可欠な条件と言えるのではないでしょう。簡単にそれぞれの説明を行います。

コンセプト:

どのような切り口で地元の魅力を伝えるか、観光にかぎらずあらゆるマーケティング戦略において最も重要な点がこのコンセプトですがやはりキャッチコピーにもなる明確なコンセプトがどの自治体にも共通してその中心にありました。「誰」に、地元の「何」を、「どう」伝えるのか? 例えば沖縄は「欧米外国人」に沖縄の「自然と自分らしくなれる魅力」を「体験ドキュメンタリー」で伝えています。その3つを徹底的に考えることが、成功へ導くコンセプトを生み出すことに繋がります。個人的には「vs徳島」のコンセプトが最も秀逸だと感じました。

動画:

近年、動画を活用したマーケティングは活況を見せていますが、観光プロモーションにおいてはもはや基本ともいえるレベルまで浸透してきていると感じます。冒頭にも述べたとおり直感的にその土地を感じてもらうことができ、拡散性のある動画というコミュニケーション手段は今後さらに一般的なものになっていくでしょう。長野県ではさらに一歩先をいき楽天と共にVR(拡張現実)を活用した地元の価値提供をおこなっています。

言葉が通じない外国人にもその魅力を伝えることができる動画によるアプローチ、鹿児島県のように4Kやドローンといったこれまでにないクオリティから、小林市のような演出など、様々な切り口がありますが大切なのはあくまでも「コンセプトに沿った内容」「拡散を狙うためのフック」が重要になってくるでしょう。ソーシャルメディア上でシェアしたくなる動機付けまで踏まえて考えなければ、せっかくの動画や作りこんだWEBサイトも意味のないものになってしまいます。

リアル:

より地元のリアルを伝える戦略も各県に共通してみることができました。例えば広島県、新潟、岩手においては観光パンフレットをその土地でしか配布しないというリアルな展開により希少性をだし、さらには実際に「足を運んでもらう」という目的達成を最短距離で果たしています。パンフレットを配布してもらう店舗など、その土地の人々を巻き込みながら観光施策を行なうことはより内部を活性化することに繋がり強力な成果を出すことができるでしょう。

他にも高知の大家族や石川の100人のレディー・カガなど、実際に会うことができるその土地に住む人々にフォーカスをあてた企画は強い訴求力をもつと共に、住民たちを観光大使として盛り上げることにも繋がります。誰もが世の中に発信できる時代、地域の住民全員が誇りをもって地元をPRするほど強く、本物であるものはありません。

予算も限られる中、これらの共通してきた3点を意識すればそれだけで成功するほど簡単なものではありませんが、少なくとも必要条件であると言えるでしょう。特に”誰のため”のメッセージかどうかが大切です。観光だけに限らずあらゆるマーケティング施策にも繋がる点ですので、ぜひこれら事例から自分なりのヒントをみつけてみてください。

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