琉球コインは実現するか?沖縄がICOして世界中からお金を集める、沖縄トークンの可能性を考えてみた

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2017年の春頃から急激に盛り上がりを見せはじめた仮想通貨やブロックチェーン技術。大手取引所による大量の広告投下の影響もあり、今や日本中が仮想通貨ブームと言っても過言ではありません。

東京ではいわずもがな、沖縄のカフェでもそこかしこで仮想通貨の話題が聞こえてきますが、その内容は仮想通貨のボラリティティ(価格変動)の高さからくる投機の可能性であり、株や証券に変わるお金儲けの手段としての参入が中心と言えるでしょう。

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2017年当初は10万円程度だったビットコインが、同年12月には一時240万円に到達するまでの上げ幅となればそうなるのも無理はありません。他にも一時的にはリップルは360倍、ネムは500倍、そして草コインと揶揄されるXPは約66,000倍もの伸びを記録していますから夢がありますよね。

一方、日本語で「分散型台帳」とも訳される、ブロックチェーン技術も注目を集め、その仕組みを使った新しい資金調達方法である「ICO」も2017年は国内で初めて実施される年となりました。世界中で数百件のICOが実施され、約4,500億円の資金調達が行われるという、まさにICO元年という呼ばれる1年だったといえます(ICOの仕組みはこちらをご確認ください。)。

「イニシャルコインオファリング」の略であるICOはトークセンセールともいわれ、独自で発行したトークンを第三者に購入してもらうことで資金を集める手法であり、株式公開(IPO)に比べて遥かに簡単に多額の資金を集められるとして注目を集めています。

ICOを実施したばかりの安値のトークンを手に入れれば、その発行体(企業、自治体、プロジェクトなど)、およびトークンの価値が上がった際、その上がり幅から利益を得られるため一攫千金を狙う多くの人々がこぞってICOに参加しているのです。

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しかし、それには詐欺案件も多く、中国や韓国では規制されており、日本の金融庁でも注意喚起を行っていますが、まだ全面的な禁止とはなっていません(2018年中にはなんらかの大きな規制がはいるでしょう)。

そんなICOバブルが広がる直前とも言える2017年4月には。「琉球コイン」という地方トークンの構想が沖縄のリウボウホールディングスと東京の仮想通貨取引所ビットバンク、販促支援のメディアフラッグの3社よりいち早く打ち出されました。

あれからその進展がなかなか見えてこない琉球コインの実態ですが、今回の記事ではこの琉球コインが実現した場合、沖縄の経済にどのようなインパクトがもたらされるかを考えてみたいと思います。


沖縄の経済を活性化させる琉球コインとは?

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沖縄タイムスより引用

「琉球コイン(仮)」沖縄で構想 店舗決済・投資呼び込む狙い」との記事が2017年4月17日の沖縄タイムスにて掲載されたことにより明らかになった構想ですが、そこでは以下のような紹介がなされています。

“沖縄独自の仮想通貨「琉球コイン(仮称)」をつくり、流通させる(中略)取引所を設置し、世界中で利用が広がるビットコインや円、ドルとの換金を可能にする。また店舗などで決済に使える環境を整える。独自の仮想通貨圏をつくって世界中から投資を呼び込み、経済活性化につなげる狙いがある。(中略)構想では県内の主要企業が出資し、取引所を名護市の経済金融活性化特別地区に開設する計画だ。”

イメージとしては、琉球コインでお買い物をすると安くなったり、なんらかの付加価値を得ることができる店舗が増えるということでしょうか。

その構想から1年経とうとしている今でもなかなか進展がみられない状況の中、NewsPicksの特集「お金2.0」の中で研究者の落合陽一氏は「沖縄がICOしたら面白い」とまさに琉球コインと同じ構想を語っていました。

将来価値を現在価値に転換する仕組みであるトークンエコノミーの考え方で、沖縄に投資をするステークホルダーを増やしていくべき、との考えを同氏は述べており、また同じ特集内ではAnyPay代表の木村新司さんも以下のように語っています。

”成長している主体が中央銀行の役割を担ってトークンを発行する、「企業コイン」や「自治体コイン」が今後はどんどん出てくるでしょう。”

つまり、ビットコインをはじめとしたデジタルデータである代替貨幣=トークンによって地方はもっと面白いことになると、両氏は述べているわけで、これを見るに改めて琉球コインにおける可能性を感じずにはいられません。


琉球コインについて考えてみた

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それでは仮に沖縄がICOをして、沖縄トークンとも言える「琉球コイン」を発行するとなった際、具体的にどのようなメリットがもたらされることになるでしょうか。

実際に沖縄に住みながら、ブロックチェーンを活用したサービスの展開を考えている筆者による一つの思考実験として以下にまとめてみたいと思います。

あくまでも想像なので、実際に流通している仮想通貨やDAppsのコインの仕組みほど厳密な内容ではありませんので、その点はご了承ください…色々ツッコミどころはあるかと思います(笑)。


琉球コインのICOは行政と民間企業のコンソーシアムによって行われる

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まずはコインを発行するにあたってはICO,つまりトークンセールを行うという流れが考えられます。発行体はどこにおくのか、誰になるのか、という点を考えなければいけませんが、そこは仮に沖縄の銀行、小売、観光関連会社、行政のコンソーシアム「RYUKYU COIN PROJECT」、略して「RCP」としましょう。あくまでも仮ですよ(笑)。※ちなみに発行体を海外に置かないと集めた資金は税金でほとんどもっていかれるそうですが…

1.琉球コインのトークン配布(ICO)

RCPが仮に1コイン=1円として10億円分の琉球コインを発行する場合、県内外から10億円を集めると同時に同等のトークン(コイン)をその購入者に配布する必要があります。

プレセールの割引やボーナスなどはおいておき、ここはわかりやすく1コイン=1円の価値とすることにしましょう。ちなみに最初から10億コインすべてを配布するのではなく、発行体が5割保持してその半分を最初のトークンセールで配布していくものとします。琉球コインのティッカーはRKCとでもしましょう。

2.琉球コインの配布

10億円分の琉球コインが発行、配布されたとして、それを保持(購入)する人は主に国内観光客、海外観光客、県民の3パターンにわけられるでしょう。それぞれのメリットはどこにあるのでしょうか。まずは先に琉球コインの特徴を考えてみましょう。


琉球コイン5つの特徴を勝手に考えてみた

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前提として、まず仮想通貨にかぎらず株や証券、そして様々な商品がそうですが、需要と供給のバランスでその価格は決まります。欲しい人が多ければ価値は上がりますし、要らないという人が多ければ価値が下がります。

なので琉球コインを発行するからには、それを「欲しい」と思ってくれる人を増やす仕組みを設ける必要があります。どうすれば欲しくなるか、例えば以下のような特徴を持たせてはいかがでしょうか。

琉球コインの特徴1:
琉球コインを使えば沖縄の商品やサービスが安く手に入る

琉球コインの特徴2:
琉球コインの支払いでしか入れない施設や、購入できない商品、サービスがある

琉球コインの特徴3:
値上がり益で沖縄の自然を保護し、課題を解決する

琉球コインの特徴4:
沖縄の事業者は琉球コインで事業税を納めれば安くなる

琉球コインの特徴5:
マイニングの仕組みはNEMと同じPoI(Proof of Importance)にして、残高・取引回数・取引量などから総合的に判断し、アクティブなユーザーに琉球コインが付与される仕組み

以上、特徴を踏まえた上で以下にそれぞれの立場からのメリットを考えていきたいと思います。


国内観光客が琉球コインを使うメリット

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言わずもがな、特徴の1、2が実現すれば観光客にとっては大きなメリットがありますよね。

沖縄のお土産さんでお会計5,000円のところを琉球コインで支払えば、日本円換算で4,500円で済むのであれば多くの人が琉球コインでの支払いを選ぶかと思います。

他にも美ら海水族館内の一部のエリアの入場料は、琉球コインでの支払いしか受け付けないということであれば多くの観光客は琉球コインの換金を望むのではないでしょうか。

もし仮に1琉球コインの価値が1円から10円に値上がりしている場合は、450RKCでの支払いで5,000円分のお土産をゲットできるというイメージです。それではその500円は誰が補填するの?というと、コンソーシアムにて保持しているプール金の値上がり益、またはマイニングによって得られた余剰金からの手当とかでしょうか。

事業者は琉球コインでの支払いを受け付けるにあたって、コンソーシアムに加入を必須とし、そのバックアップのもと琉球コインで安く商品を提供しても損をしない仕組みができたら面白いでしょう。


県民が琉球コインを使うメリット

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沖縄県民消費者の視点も重要ですが、まず事業者視点のメリットを考えると、やはり特徴4の事業税を琉球コインで納めれば安くなる、という点があげられます(行政の圧倒的な努力が必要になりそうですが…笑)。

これにより事業者はお客さまにどんどん琉球コインを使ってお買い物をして欲しいと思うでしょうし、お客さまも安く買物ができ、ディスカウント分も損せずに補填もされるのであればお店(マーチャント)側は導入をしない理由はなくなるかと思います。

また、新しい琉球コインのマイニングはPoIによって行われるので、琉球コインでの売上や保持が多い事業者ほど新しい琉球コインの創出に貢献するものとなります(※マイニングについては後述します)。

事業者によってマイニングされたコインはコンソーシアムにプールするものとし、全体のディスカウント分の補填にまわし、中央管理するものとします。

どの事業者がマイニングに貢献しているかを可視化することで、競争意識も出てくるでしょう(自分たちでマイニングした琉球コインを自分のものとできず、いったんコンソーシアムにまわして全体に再分配するというのがポイントです)。

また県民消費者についても、もちろん観光客と同じくディスカウント価格で購入できるようにし、消費を促すことでメリットを享受できます。

また特徴3のように、値上がり益の一部を沖縄の自然保護や新たな開発に使うものとして、その信託の投票権は琉球コインを持っているアカウント単位でできるものとします。その投票権限は沖縄在住の県民を強くするものとし、県民ファーストで琉球コインによる増益の投資先を決めることができれば沖縄の永続的な発展にも繋がるのではないでしょうか。

匿名性が希薄になりますが、県民か観光客かの違いをウォレットアカウントに持たせたほうがよいのではと考えています。

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トークン保持者の投票でプロジェクトが使える資金の額を決めることができる「DAICO」という新しいICOの仕組みを使って、沖縄トークンこと、琉球コインで集まったお金の使い道を決めることができたら面白いですね。


海外観光客が琉球コインを使うメリット

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基本的には国内観光客のメリットと同じですが、たとえば円への両替手数料よりも圧倒的に琉球コインへの両替のほうが安い手数料であればその導入のハードルは大きく下がるかと思います。

さらに沖縄でオトクな買物ができたり、特別な施設に入れるのであればなおさらでしょう。

もし琉球コインを多くの人が欲しがり値上がされるのであれば、コンソーシアムの資金も増えるのでその資金を21年度から導入されるとされる観光税などの免除に回せば喜ばれるでしょうね。また琉球コイン用のウォレット開設時にKYC(身元確認)などもしっかりとる仕組みを作れれば、観光客に沖縄をもっとスムーズに楽しめる環境を提供できるのではないでしょうか。


琉球コインのマイニングについて

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最初に10億円分の琉球コインを発行し、初期売り出し分の5億円分が完売した前提で考えます。

コイン発行体となるコンソーシアムと、最初にトークンセールに参加した人々はそれぞれ5億琉球コインをもっている状態ですが、発行体のコンソーシアムは配布で得た5億円の現金を保持している状態です(実際にはICOに適したERC20などイーサリアムベースのトークンから現金に変える必要はありますが..)。

5億円分の琉球コインを購入してくれた人々に沖縄で消費をしてもらうのがこのプロジェクトの目的ですが、その前提として、例えば5億円分、全てが消費に使われたとした場合、コンソーシアムは事業者にいつでも日本円で(特徴1のディスカウント分も考慮して)交換できる状態にしておく必要があります。それを最初にコンソーシアムで保持しておく5億円から補填できるようにします。

その仕組みがワークし琉球コインの魅力が認識され、需要が上がっていけば1琉球コインに1円以上の価値がついて、取引所で売買されるようになります。そうなるとコンソーシアムが最初に保持している5億円分の琉球コインの価値も上がることとなり、それを値下がりしない範囲で放出(売却)していくことでコンソーシアムでは潤沢な資金を確保できるようになります(こういう財源確保の方法はリップルでも行われています)。

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また仮に発行上限を100億琉球コインとした場合、その上限に達するまで取引所で購入する手段とは別でコインを生み出すことができるようにします。それがマイニングであり、言い方を変えると取引検証作業、またはコンセンサスアルゴリズムといいます。PoW、PoSなど様々なものがありますが、ここではPoIとし、多くの琉球コインを保持、利用した人に対して一定数のコインが付与される仕組みにしてはどうかと考えています。

必然的に観光関連の事業者はコインの受取や保持が多くなるかと思いますが、そういった有力ないくつかの事業者をスーパーノードとして、取引の検証作業を行う権限を与えてはどうかと考えています。

また、一つの決まりとして琉球コインでの決済導入はコンソーシアムに加入と同義となり、そこでマイニングされたコインはコンソーシアムに付与されることとします。琉球コインの消費が進めば、コンソーシアムには琉球コインがたまってきますので、それを定期的に放出して、事業税の補填など沖縄全体のトークンエコノミーの保持に努めるものとします。

コンソーシアムに加入している事業者のみがマイニングできる仕組みであればリップルのPoCと同じですが、琉球コインでは一般消費者も一定数の資産をもてばコインのマイニングができる仕組みとして、琉球コインの獲得と沖縄での消費を促すモチベーションを設計したいと考えています。※NEMのPoIとリップルのPoCをかけあせた仕組みが最もイメージが近いかもしれません(違いはこちらから)。


琉球コインこと、沖縄トークンは実現するか

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ここまでの、完全なる妄想にお付き合い頂きましてありがとうございます(笑)。あくまでも想像ですので、現実的に難しいことや仕組みとしてなりたたない矛盾している箇所もあるかと思います、おかしい点があればこちらまでご指摘いただけると嬉しいです。

独自のブロックチェーンインフラを作って経済を循環させる仕組み。ハードルは決して低くはありませんが世界中の沖縄ファンを巻き込んでいくための取り組みとしては有効であり、かつ今後の沖縄の財源確保の手段としても決して”向き合わない”という選択をとるべきものではないでしょう。

改めてになりますが、上記に述べた沖縄トークンエコノミーの展開案をまとめると以下の通りとなります。

1.行政と民間の共同コンソーシアムを発行体としてICO

2.集まったお金を担保に、沖縄の事業者に決済導入を促進

3.消費者へ利用メリットを訴求(琉球コイン利用におけるディスカウントなど)

4.独自の取引所、または第三者の取引所で売買される

5.沖縄の事業者は値上がり益をベースに琉球コイン決済導入のメリットが増える(事業税などの控除)

6.値上がり益使った沖縄への投資内容は保持者が多数決で選べる

行政と民間のコンソーシアムを中心に、観光客と県民の消費者、そして観光産業に従事する事業者の三位一体となった連携により実現する仕組みと言えるでしょう。完全な分散型というものではありませんが、沖縄に目を向けてもらうキッカケとしては沖縄トークンは非常に有益なものになると感じます。

この中でも特に琉球コイン保持者であれば「沖縄の自然維持や経済発展の未来を選べる」権利を得られる点が重要だと考えています。沖縄のことを愛しているけど、事情があって沖縄に住所がおけない人でも、沖縄の将来を作っていく一員になってもらう仕組みを作れるのかと。

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ハワイの観光客数を超えるなど、さらに発展を遂げていく場所への投資としては決して悪くないものかと思いますし、県内外関係なく沖縄を愛する人達が手をとって島を盛り上げていく手段として、トークンエコノミーの実現は面白い可能性を秘めています。

観光産業と基地に頼り続けてきた沖縄が見ているビジョンはITの可能性であり、「おきなわICT総合戦略」の名のもとに助成金を使って様々な取り組みを昔から行っています。こういったお金の流れをブロックチェーンの仕組みを使ってよりオープンで分散的なものにしていくところにもイノベーションのポテンシャルが強くあると感じます。

はじめは東京の取引所からの提案だとしても、リウボウという沖縄で圧倒的なブランドをもつ会社が、「琉球コイン」という構想をいち早く打ち出したところに、沖縄にはまだまだ大きな可能性があるのを感じます。



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